障害年金の遡及請求とは?認められやすい傷病と難しいケースを紹介!
障害年金は、病気やケガによって生活や仕事に支障が出た際に、公的制度から経済的な支援を受ける仕組みです。
しかし、「本来受け取れるはずだった期間」を見逃してしまうケースも少なくありません。たとえば、制度を知らなかったり、手続きを後回しにしているうちに、障害認定日以降の分を未請求のまま過ごしてしまうことがあります。こうした状況に対応する手段として「遡及請求」があります。初診日や診断書など、必要な要件を満たせば、過去にさかのぼって給付を受けることが可能です。以下では、遡及請求に関する基本的な知識、必要条件、手続きのポイント、そして請求が難しいケースや傷病について、わかりやすく整理していきます。
障害年金とは
障害年金は、公的年金制度(国民年金・厚生年金)の加入者が、ケガや病気の後遺症によって日常生活や就労に支障をきたす「障害状態」になった際に支給される給付金です。障害状態が一定の等級(1級・2級)に該当すれば、「障害基礎年金」や「障害厚生年金」が定期的に支給され、経済的な安定と生活再建をサポートします。
遡及請求とは
遡及請求(そきゅうせいきゅう)とは、障害認定日(初診日から原則1年6か月後)以降、既に障害等級に該当していたにも関わらず当時申請していなかった期間について、後から最大5年分までさかのぼって障害年金を受給する手続きです。
制度を知らなかった、忙しくて手続きが遅れた、といった理由で本来受給できたはずの期間の年金を、遡って受給できる可能性があります。
遡及請求に必要な要件・条件
遡及請求が認められるためには以下の条件を満たす必要があります。
- ・初診日要件
- 対象となる傷病の初診日が公的年金加入中であること。
- ・障害認定日要件
- 初診日から1年6か月後の障害認定日において、障害年金の支給等級(1級または2級)に該当する障害状態であったこと。
- ・時効(5年)内
- 遡及請求で遡ることができる期間は最大5年分までです。5年を超えた期間は基本的に受給できません。
遡及請求申請時の注意点・ポイント
- ・初診日の明確化を明確にする
- 初診日は年金の加入状況や認定日の確定に欠かせないため、カルテ、紹介状、保険組合レセプトなど証拠資料を徹底的に収集します。
- ・診断書の準備
- 障害認定日時点と現在の状態を示す2通の診断書が必要。医療機関との密な連携が求められます。
- ・丁寧な書類準備
- 書類不備は審査を遅らせ、結果的に不支給や再申請の手間を増やします。丁寧なチェックが重要です。
- ・時効対策
- 5年の制限があるため、思い立ったら早めに行動しましょう。
遡及請求が難しいケース
- ・初診日証明が困難な場合
- カルテ紛失や医療機関の閉院などで初診日の証明が難しいケース。
- ・認定日時点で軽度の状態だった場合
- 障害認定日当時、重度の障害状態と認められなければ遡及は困難です。
- ・長期放置による時効超過
- 請求を怠ったまま5年以上経過すると、超過分は原則受け取れません。
- ・転院を繰り返しているケース
- 初診日の特定が難しく、また初診医療機関が閉鎖していると証明資料集めが困難になります。
遡及請求が難しい傷病
以下の傷病は、初診日や認定日を証明する医証確保が困難な場合が多いため、遡及請求が難しい可能性が高いです。
- ・糖尿病
- 症状が徐々に進行するため、認定日時点で障害状態が明確にならず、証明が困難です。
- ・精神疾患(うつ病、統合失調症など)
- 症状変動が大きく、当時の障害状態を示す診断書が入手しづらいケースが多いです。
遡及請求が認められやすい傷病
遡及請求が比較的認められやすい傷病には、初診日や障害認定日を明確に証明しやすい特徴があります。
-
人工透析
- 透析開始日は医療記録が明確で、障害認定日も特定しやすいため遡及請求が認められる可能性が高いです。
- >>>人工透析(慢性腎不全)の方は障害年金の対象です
-
人工関節置換術
- 手術日が認定日となりやすく、医療証拠を整えやすい点で、遡及請求が認められる可能性が高いと言えます。
- >>>人工関節を挿入している方は障害年金の対象です
-
長期入院を伴う疾患(脳梗塞、がんなど)
- 入院履歴・検査結果・診療記録が豊富で、認定日に相当する障害状態を証明しやすい傾向があります。
- >>>脳出血、脳梗塞の方は障害年金の対象です
よくある質問(FAQ)
Q1. 遡及請求は誰でもできるの?
A. 要件を満たせば可能ですが、初診日や障害認定日時点の状態証明が必要で、請求者様の実際の状況により難易度が変わります。
Q2. 閉院した病院で初診を受けた場合はどうする?
A. レセプト情報や健康保険組合記録、他院の紹介状などで補完できる場合があります。専門家である社労士に相談することを強くおすすめいたします。
Q3. 遡及請求が認められないときは?
A. 認定日時点で要件を満たしていなかった場合、後に症状が悪化していれば「事後重症請求」で対応可能な場合があります。
社労士に依頼するメリット
- ・書類整備の専門知識
- 当事務所は、障害年金申請における必要書類や診断書取得手順を熟知しており、書類の不備を最小限に抑えることができます。
- ・初診日特定・証拠収集サポート
- 複雑な医証収集や証拠裏付けを代行し、より確実な申請手続きが可能です。
- ・スムーズな申請手続き
- 障害年金のプロである社労士が段取りすることで、受給までの期間が早くなることが期待できます。
お問い合わせください
遡及請求をすることで、最大5年分を遡って障害年金の給付を受けることができます。
遡及請求に関する手続きに不安がある場合は、担当の年金事務所や障害年金専門の社会保険労務士に相談するようにしましょう。
当事務所では、障害年金分野に精通した社会保険労務士が初診日特定から書類作成、提出までトータルでサポート。お困りの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
初回相談は無料です。
最終更新日 2024年12月8日 by 社会保険労務士 久保将之